超望遠レンズ初心者が、FUJIFILMの超望遠ズームレンズ「XF150-600 F5.6-8.0」を使ってみたのでそのレビュー。このレンズに使えるレンズケースのことも。
組み合わせるカメラは「X-T4」。(撮影の都合上、装着するのはX-T2)。
外観
塗装は白、というよりマットなシルバーグレー。キャノンの白レンズもそうだけど、白塗装は表面温度の上昇を抑える効果があるとかないとか。ただ、ネイチャー撮影する場合はこの目立ち度はネックになるので、レンズカバーなどでカモフラージュすることになると思う。
望遠を使う人はフルサイズ用の望遠レンズをAPS-C機につけて画角を稼いだりするけど、FUJIFILMはセンサーサイズがAPS-Cで統一されてるので、レンズもAPS-C専用設計。おかげでフルサイズ用の同クラスの望遠レンズに比べると一回りコンパクトで軽い。ご存じの通り、FUJIFILMのXシリーズはAPS-Cだからと言って画質の問題は全くなし。
150−600という画角を持ちながら、重量は1.6kg。カメラ本体と合わせても2kg強。普通はこのサイズだとレンズだけで2kg超える。しかもAPS-Cなので画角は35mm版換算で229-914mm。この画角を手持ちで振り回せるってちょっと衝撃的。
特筆すべきは開発陣もこだわったというインナーズーム。ズームに伴う伸縮がなく、画角に関わらずレンズ長が一定なので本当に使いやすい。防塵防滴についてもインナーズームの方が安心感が大きい。
機能面
AF
普段は動体AF(AF-C)を使うことはほとんどないんだけど、AF設定を「ゾーン」にして野鳥を追ってみた。
特別「スッ」と合うというほどの感覚はないが、AFに向いた条件下では特に問題ない速度と精度で合焦してくれる。ただ、背景が空の場合など、ピントが戻ってこないことも度々あった。この辺はAF使い慣れていないので、被写体に併せてフォーカスリミッターや追従特性などを適切に設定すれば変わるのかも。
X-T5やX-H2S の鳥モードならもっと快適かもしれない。
AFに関してはFUJIFILMはあまり強くないので、動き物を専門に撮りたい+FUJIFILMにこだわりがないのであれば、AFが強いメーカーにした方が無難。
手ぶれ補正と機動性
撮影はほとんど手持ちで行ったけど、テレ端でもシャッタースピード250くらいならしっかり止まる印象。1箇所にじっと留まって撮るスタイルより、歩き回るスタイルが好きなので、軽さとコンパクトさが生み出す機動性と相まって、超望遠を手持ちできるというのは本当にありがたい。
三脚座
取り外し可能な三脚座は、着脱もスムース。三脚座自体にアルカスイス互換の溝が切ってあるのでアタッチメントを付けなくても直接雲台に固定できて便利。三脚座を軸に回転するので縦位置への移行もスムース。もっともかなりのシーンで手持ちで撮影できてしまうので、撮影スタイルによっては三脚座の出番は少ない気がする。
レンズフード
レンズフードにはロック機構がついた。雪山でフードが外れて紛失したことがあるのでこれはありがたい。フィルター操作用に開けてある窓も、カバーが着脱式ではなくスライド式なので非常に使いやすい。
絞りリング
気になったのは絞りリング。FUJIFILMのレンズは、レンズに絞り調整用のリングが付いていてここで絞り値を直接設定できるんだけど、このリングの動きがかなり軽い。なのでズーム調整時に一緒に絞り値が変わってしまうことがしばしばあった。絞り優先やシャッタースピード優先は使わずにフルマニュアルで撮るスタイルなのでこれは困った。仕方ないのでこのレンズ使う時はAモードにして手元のコマンドダイヤルで絞り調整することにする。今後絞りリングにはロック機構を付ける方針らしいので今後改善されていくかもしれない。
その他
ケース
ケースはロープロの「プロタクティック TLZ75AW」を使用。底部を拡張すれば、X-T4と三脚座、レンズフードを逆づけした状態でギリギリすっぽり収まる。レンズフードをつけた状態だと取り出しが若干きつい。
フード順づけの状態でも、蓋を閉めるのは厳しいけど何とか収まる。
レンズカバー
白い鏡胴はネイチャー撮影では目立つので、レンズカバーをつけたいところ。このレンズ専用の選択肢はあまり多くないし中々のお値段する。見た目にこだわらないのであれば、100均に売っている長さ40cm前後のアームカバーが意外と使える。ズーム操作もできるし、各ボタンも位置を覚えておけば使える。ボタンの位置だけカットしてもいいかもしれない。
見た目はアレだけど、コスパが素晴らしいので浮いたお金でバッテリーとか買えるし。
写り
作例に勝るレンズレビューはないと思うので作例を何点か。全て手持ちです。
テレ端
600mm ISO3200 F8.0 1/160
600mm ISO1600 F8.0 1/200
600mm ISO3200 F8.0 1/125
600mm ISO800 F8.0 1/1000
600mm ISO400 F8.0 1/800
600mm ISO800 F8.0 1/800
ワイド端
150mm ISO500 F5.6 1/250
150mm ISO400 F10 1/1000
150mm ISO500 F5.6 1/400
まとめ
FUJIFILMの場合は、レンズの選択肢が多くないので、超望遠ズームが必要な場合には最有力候補になると思う。
これに近いレンズとして「XF100-400」にテレコンを使えば150−600に近い画角は得られる。「XF100-400」は使ったことがないので、比較はできないけど、ただ、やはり元になる画角が違うので、既に100−400を持っていてコストを抑えたいなどの明確な理由がなければ、「XF150-600」一択かなと思います。これにテレコンかませれば更にとんでもない画角になりますし。
35mmと50mmの差とは次元が違って、900mmっていう画角はもう見える世界が全く違う。このレンズでないと見えない世界なので、野生動物やスポーツ、乗り物など超望遠で撮るべき被写体に興味がある人は試してもらう価値があると思う。
フィールドに出て撮影するスタイルだと、機材がコンパクトで軽いに越したことはないので、APS-Cでフルサイズと遜色ない画が撮れるFUJIFILMのXシリーズは本当にいい選択肢だと思う。